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業界初の買取

定番と旬のバランスをとる消費市場と接点を持つ企業にとって、変わらずに守り続ける幹の部分と、時代に添って変幻する枝葉の部分のバランスは重要だ。 老舗と言われるヨーロッパのデラックスブランドの浮沈を見ていると、このバランスの大切さが実感できる。
もともと受け継いできた企業としてのアイデンティティは、時代を超えて強固に守り続ける必要がある。 それを積み重ねていく歴史の厚みは、新参者が真似しようと思っても、絶対に追随できないものだからだ。
その一方で、変化する市場に対応して、新しい切り口を見せていくことも要求される。 老舗だけに、留まっているイメージを持つことは、即、古臭さにつながってしまうのだ。
日本で絶大な人気を維持している「ルイーヅイトン」は典型例のひとつだろう。 老舗プランドとしてのストーリーが、かなりの確度で日本の消費者に伝わっている。

素材や縫製の羅蓄については、女性だけでなく男性をも巻き込んで浸透している。 老舗ならではの歴史の厚みと品質の高さ、これについては圧倒的な優位性を持っているのだ。
しかも、その一方で、新しいイメージを打ち出していくことも怠ってはいない。 たとえば「銀座松屋」に隣接したブティックでは、従来のクラシックな雰囲気から、思い切って真っ白なブティックを作って話題を呼んだ。
続いて村上隆とコラボレートした限定版のシリーズが、大々的なプロモーションと相まって、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。 つまり、定番=変わらぬよいものと、旬=新しく話題性の高いものとの両輪を回していくのが、ファッションーマーケティングにおいての必須項目なのだ。
創業して三〇年に迫ろうというB。 ミーハーに時代を追い続けている小売店というイメージが強いが、意外に時代を超えて愛されてきた定番的商品も多い。
たとえば、フランスの「セントジェームズ」の横縞ボーダーTシャツは、オープン当初から店頭に並べ、今でも定番商品のひとつとして置かれているロングセラーだ。 「ゴンパーズ」のスニーカーも、原宿第一号店を出した直後から取り扱い、二〇年以上にわたって売れ続けている。
いずれも当初は、時代の目利きとして買いつけてきた商品が、結果的に売れ続け、Bの顔のひとつとして定着したものだ。 バイヤーを育む風土Bのバイイングは本部一括方式。
商品は、「B」「レイB」といったレーベルごとにユニット化されている。 そして、ユニット別に、国内外のブランドからバイヤーが買いつけをする、オリジナル商品を作るといった仕事がおこなわれている。
バイヤーは、世界中の展示会や工場を巡り歩き、旬の商品を求めて飛び回っている。 そのなかで、ロングセラーとして残っていくもの、旬として終わっていくものが、自然に選別されていくことになる。
その一方で、Bのオリジナル商品を工場に発注をかけて作る。 こちらは買いつけ商品より利益率が高く、生産リピートもかけやすいという意味では、重要な存在だ。
かといって、すべての商品がロングセラーになればいい、あるいはオリジナルが売れ続ければいいというわけでは、もちろんない。 ファッション小売店である以上、常に時代の先端としての商品を打ち出していく必要があるのだ。
「バイヤーになりたての頃に、ニューヨークがおもしろいと思って展示会を巡っていたら、ピンクのミニドレスがあって、ピンと惹かれるものがあった。 買いつけてみたら、それが『トッカ』だった。

その直後から、日本で一気にブームになった」Mは、最初に自分が目をつけたブランドが、世の中の注目を浴びていった様を、実に楽しそうに語ってくれた。 ここでも。
半歩先”を捉えられるかどうかが、まさにバイヤーの成否を分けるのだ。 ここ数シーズン、ブームになっているエミリオープッチの派手なプリント柄のウェアは、渋谷の「B東京」オープンの時(一九九三年)にラックにずらり並んでいた記憶がある。
当時、私は、「六〇年代に人気を博した懐かしいプッチ柄で、最近の六〇年代ブームの兆しには符合しているけれど、これだけの量、置いて売れるのだろうか」と首を傾げたものだった。 が、それから徐々に火がついて、今は旬のアイテムのひとつになっている。
これは逆に、ちょっと早過ぎた導入だったのかもしれない。 ファッションにおける定番と旬のバランスは難しい。
男性には、定番をこよなく愛する層が確実に存在するが、女性は相対的にその層が薄い。 Bにおいても、メンスとレディスでは、定番と旬のバランスは当然、変えている。
もっと言えば、レディス分野においては、常に「旬」をタイムリーに提供し続けなければならない。 猛スピードで走り続けなければ生き残れない、実に厳しい世界なのだ。
「レイB」では、新たに「ディス」というメンスラインを出したばかりだ。 これは、Mの部下である二七歳の男性バイヤーが「絶対やってみたい」と手を挙げたもの。
レディス発のメンスラインであり、「バイヤー自身が今を感じるおもしろいもの」を揃えた新しい試みだという。 「やりたいことに手を挙げ続けると、何か道が開けてくるのがうちの会社のいいところ」とMは言う。

組織母体が大きくなると、とかくこういった風土は置き去りにされがちだ。 が、自由な発案が、システムとしてではなく、いつでも言える雰囲気がキープできている。
若手のアイディアに対して、いい意味で責任と自由を与え、句に挑戦していくのも、Bらしい横顔のひとっなのだ。 単体としての顔の弱みさまざまな場所で、“まち・みせ”の動きを見ていると、どの都市に行っても、知った店があることで、ほっと心がくつろげることがある。
地方都市で講演した後、くたくたになった身体を休めるために「スターバックス」で一杯のコーヒーを飲む。 同じく、帰りの新幹線のなかで読む本を探すために、書店の「リブロ」があったりすると嬉しくなる。
まったく知らない店よりは、馴染みのある店。 その方が、使い勝手や雰囲気があらかじめわかるために、安心・安全という意識が働くのだ。
店サイドから見ても、チェーン化にメリットがあることは言うまでもない。 品揃え商品の仕入れを一元化できる。
オリジナル商品のロットが見込めてコスト逓減ができる。 販売マニュアレこ則った合理的な接客がおこなえる。
こういった効率・合理化によって、確実な利益拡大を図れるはずだ。 「ユニクロ」は、これをアパレルの分野で徹底させてきた最たる事例だ。
一九九八年、原宿に旗艦店を出した時は、大きな話題を呼んだものだった。 一九〇〇円のフリースジャケットを求めて人が集まり、入場制限をおこなうほどの人気ショップになったのだ。

これを起爆剤に、ファーストリテイリングは多店舗化を一気に進めた。 あの街にもこの街にも「ユニクロ」は存在する。
品揃えも商品配置も、店のインテリアデザインもマニュアルに則り、徹底して均質化されたイメージが送り出される。 何しろ「道具としての洋服」なのだから、生活必需品という意味ではスーパーやコンビニに近い。
しかし、特にファッション商品の場合は、どこにでもあるようになってしまう。 あるいは、いつでも同じものだけ売っている。
そうなると、人の気持ちは確実に離れていく。 そして、店舗数の拡大速度が早ければ早いほど、その傾向は強くなる。


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